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20040321

政治的資産としてのホロコースト

ハンブルクと北米の間を結ぶ豪華客船セントルイス号は1939年5月13日、936名の乗客を乗せて、ハンブルク港を出航した。以後、この船はさまよえる船となった。
936名のうち、930名がユダヤ人だった。大西洋を横断して、最初の寄港地ハバナでは、キューバ政府がセントルイス号の寄航を拒否した。ドイツでの迫害を逃れてきた人々を乗せて、セントルイス号はアメリカ合衆国を目指して北上した。
しかしアメリカ合衆国政府はユダヤ人難民の受け入れを拒否、寄航を阻止すべく沿岸警備隊の巡視艇をセントルイス号に張り付かせた。
数ヶ月に及ぶ問答があった後、セントルイス号はむなしく大西洋を東へと戻った。結局、この時のユダヤ人難民は、英国、オランダ、フランスが振り分けて受け入れることになったが、まもなくそれらの諸国はドイツのくびきにつながれることになり、この時のユダヤ人、930名のうち、第2次世界大戦後までの生存が確認出来ているのは英国が受け入れた288名のみである。
こうした例に見られるように、第2次世界大戦以前においてはアメリカは積極的にユダヤ人救済に乗り出したとは言い難い。
ナチスも当初より、ユダヤ人の絶滅を意図していたのではなく、少なくとも最初のうちは、ユダヤ人をドイツから追放することを模索していた。アメリカ合衆国や英国、英国が統治していたパレスチナへの送り出しを政策として進めていた。そのため、パレスチナにユダヤ人国家を作ろうというシオニズムとは、実はある時期まで協力関係にあって、こうした算段がアメリカや英国の拒絶のために挫折した結果、ヴァンゼー会議においていわゆる「最終的解決策」が決定されたのである。
アメリカ合衆国のメディアにおいてユダヤ資本が大きな影響力を持ち出すのは、第2次世界大戦中、あるいはそれ以後のことであって、ユダヤ系市民も政治的に組織されてはいなかった。
戦前のアメリカにおいてジャーナリズムの主流は新聞だったが、これはハースト系、ピューリッツァー系のいわゆる大衆紙が主流であり、The New York Times にしたところで、ただの地方紙に過ぎなかった。
アメリカ人が真面目なジャーナリズムを欲するようになったのは、第2次世界大戦という大きな事件を経験するのを待たなければならなかった。
ユダヤ人は相対的に非力だった。
こうした非力な状況が結果としてホロコーストを許すことになったとして、戦後、ユダヤ人たちは団結し、強力な影響力を構築していった。ホロコーストは彼らが結束する最大の動機となったが、同時にそれは、彼らが運動を進めるにあたって、最大限に利用すべき資産となった。
反ユダヤ主義、ユダヤ系のある部分に対する批判、イスラエルに対する批判、ナチズム、これらは本来はイコールで結ばれるはずもない。しかしホロコーストという脅迫材料によって、ネオナチ、反ユダヤ主義者とレッテルを貼り、いかなる批判もユダヤ人たちは封じ込めてきた。
そうするだけの正当な理由があった場合もあるだろう。しかしそうではない場合もあったのだが、そうした場合においてさえ、やはり反ユダヤ主義者と罵倒されることが多かったのである。
Google で“bush anti-semitism”で検索すると13万件もヒットする。
この不合理な状況が、イスラエルの暴走を許し、結果として世界をこれだけの不安定な状況に追い込んでいるのである。比較的ユダヤ系の締め付けの弱い欧州では、このところイスラエルを非難する言説が増えてきているが、それは従来の右翼からのものではなく、かつてはユダヤ人に対して同情的だったリベラル派からなされていることが多い。これは危険な兆候である。
石を放り投げればやがては地面に落ちる。これは単なる物理的な現象であって、正義、不正義とは関係がない。ホロコーストを利用して自らの横暴な行為を正当化すれば、それに対する反発も当然強まる。究極的には「これほど横暴なユダヤ人なのだから、それを絶滅させようとしたヒトラーは正しかった」という意見さえ出てきかねない。
実際、アラブ人のかなりの部分がそう考えている。

菜食主義者たちのアニマルライト運動を訴える人たちが、養鶏場の状況をナチスの強制収用所にみたてた展示を行い、これをドイツ・ユダヤ人中央評議会が「ユダヤ人の尊厳を傷つけるもの」としてこの展示を非難した(BBC NEWS)。
この行動自体が妥当かどうかは論評を差し控えるが、ユダヤ人の過剰な反応と見られる可能性は否定しきれない。第2次世界大戦から60年が過ぎ、いかに脅迫的に振舞おうとも風化は避けられないし、いずれは風化していくべきなのだ。
ホロコーストの政治利用、あるいは使命、どちらでもいいが、ユダヤ人のこうした振る舞いに対する風当たりは強くなっていくばかりだろう。



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