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20040728

子供を産まない東アジア

子供は労働力として生まれてくるのではないし、ましてや介護の引き受け手や、年金制度を維持する原資として生まれるのではない。少子化に関する議論が、ある人が評するに「さかしら」なものに陥りやすいのは、女性が子供を産まない理由を単に経済的な側面から語ろうとすることが多いからだろう。
私は男性なので、少子化に関する取り扱いの仕方はどうしても鈍感になってしまうかも知れないが、少子化がやはり見逃せないひとつの現象、または潮流であるのは確かなので、少々述べてみたい。
これを考えること自体がもし女性を不快にさせるのだとしたら申し訳なく思うが、不愉快にさせることが目的ではないことをご了承いただきたい。

少子化は先進各国に共通して見られる傾向だが、こちらの資料を見る限り、日本と韓国の少子化傾向は、その急激さという点で特に目を引く。
asahi.com のこちらの記事を読むと、台湾でも状況は同じようで、91年には1.72だった合計特殊出生率が、昨年は1.24という急激な落ち込みようである。
中国の数字は明らかでない(私が探せなかった)が、15歳未満の若年層の割合がすでに2割程度であり、仮に政府が一人っ子政策を緩和しても、出生率が急激に上昇することはないだろうと予想される。
イタリアなど、他地域で日本の出生率(1.29)を下回る国もあるにはあるのだが(イタリアの合計特殊出生率は1.29)、イタリアは出生率の回復局面にあり、更なる長期低落傾向が見込まれるという点では日本の方が、状況は深刻だとも言える。
韓国(1.17)の数字とあわせてみれば、東アジアは事実上、世界でもっとも少子化が進行している地域であり、これといった対策もほどこされていない。
もっとも、児童手当の拡充、保育所の拡充、育児休暇の拡充という「少子化対策」がどれほど効果を挙げるかは疑問であって、スウェーデンは国家としてはほぼ限界ぎりぎりとも言えるこうした措置の拡充をとっているのだが、それでも2003年の数字は1.65と、人口を現状維持できる目安となる2.08を下回っている。
しかもスウェーデンの場合は婚外子の割合が半数を越え、「家族」というものがかなり流動化していてなお、この数字である。
少子高齢化社会に対する具体的な対応策としては、もしそれが労働力の不足を意味しているのであれば、移民受け入れという形でしか具体策がないのが実状だろう。
それにしても、社会資本が他地域に比較して充実している、更に結婚や出産のプレッシャーもより強く働いていると想定される東アジアにおいて、非常に極端な少子化が進んでいるのはどうしたことだろう。
私の友人の夫婦も子供がいない人が多いのだが、彼らが言うには「子供を育てる環境にない」というのが子供を作らないという選択をしているもっとも強い動機であるらしい。
少子化の原因は夫婦が子供を作らないのではなく晩婚化・非婚化が原因だとも言われているが、子供を作らないという夫婦もやはり急増しているようだ。
フクヤマの「大崩壊」によれば、非伝統社会が進んだ結果、個人(孤人)でも生きられるようになり、結婚したり出産したりという必要性がそもそも減少したからだということらしいのだが、逆に言えば、もしそれが正しいのだとすれば、合計特殊出生率は伝統社会の崩壊の度合いを測る指標として使えることになるが、果たしてそうなっているだろうか。これは私の認識が違うのかも知れない。
しかし転がすには魅力的な考えではある。世界のどこよりも少子化傾向が進んでいる東アジアが、その伝統社会をどこよりも急速に崩壊させているのだとしたら。
過剰な競争社会、未熟なものを許さない社会風土がここにあるということを意味するのではないだろうか。



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