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20080425

HRH

イギリスにおける王族とは1917年にジョージ5世の発した勅許状によって定められた「His/Her Royal Highness」の範囲の人々を指すことが多い。この範囲の人たちが、いわゆる Prince/Princess で、それは王位継承の順位とは必ずしも一致しない。
ジョージ5世王族勅許状では、国王夫妻の他に、
「君主の子、君主の息子の子、ウェールズ公の長男の長男」を狭義の王族として、殿下の敬称とともに Prince/Princess で呼ばれるものとした。
イギリスには女王もおり、女系の継承も認められているが、直系と傍系では直系が優先されるものの、同一系統の中では男系が女系に優先されるように、ここでも男系は女系に対して優遇されている。
現在の女王の子と孫で具体的に見てみよう。
女王の子は上から順に、チャールズ皇太子、アン王女、ヨーク公アンドリュー、ウェッセックス伯エドワードである。
彼らは兄弟姉妹なので同一系統であり、その中では男系は女系に優先するから、長男(第一子)-次男(第三子)-三男(第四子)-長女(第二子)の系統順で王位継承権が発生することになる。
また、彼らは「君主の子」なので、一様に殿下の敬称と、王子/王女の称号で呼ばれることになる。
その次の世代では、チャールズ皇太子、ヨーク公アンドリュー、ウェセックス伯エドワードの子らは「君主の息子の子」であるので、一様に殿下のつく王子/王女だが、アン王女の子らは「君主の娘の子」なので格落ちになって、王族としては遇されない。
イギリスの狭義の王族には他にジョージ5世の息子のグロスター公とケント公の家系がある。
エリザベス2世女王はジョージ5世の次男の家系だが、三男の家系がグロスター公、四男の家系がケント公になる。
ジョージ5世の三男の息子が現在のグロスター公で、彼は「君主の息子の子」なので、殿下のつく王子である。同様にケント公家にはケント公、マイケル・オブ・ケント王子、アレクサンドラ王女と三名の狭義の王族がいる。
しかしグロスター公家やケント公家は現在の王室からは傍系なので、王位継承順位ではより直系に近いアン王女の平民である子供たちよりも下になる。

女王の子たちのうち上のふたりの子供、チャールズ皇太子とアン王女が生まれた時、祖父のジョージ6世は存命であった。
つまりその時点で、彼らは「君主の娘の子」であって、本来であれば、殿下でもなければ王子/王女でもなかった。
そのため、1948年にジョージ6世は別の勅許状を発効し、エリザベス王女(当時)とエディンバラ公の間に生まれた子供には殿下の称号と王子/王女の称号を与える措置をとった。
これによって、チャールズとアンは、生まれながらにして殿下であり、王子/王女であるということになった。
この措置はあくまで王位を継承することが確実だったエリザベス王女の、子供たちに限っての特別な措置であり、エリザベス王女の妹のマーガレット王女の子供たちには行われなかった。
そのためマーガレット王女の子供たちには通常の「君主の娘の子」という規定が適用され、狭義の王族の範囲から外れた。
エリザベスが1952年に即位して以後に生まれた子たちには(ヨーク公とウェセックス伯)、通常の「君主の子」規定が適用されている。

現在の王室、女王がいて、チャールズが皇太子で、という状況で、ウィリアム王子が結婚して、第一子が娘、第二子が息子、第三子も息子が生まれるとしよう。
その場合、長男には「ウェールズ公の長男の長男」という規定が適用されて王族となるが、長女と次男は規定外になるので王族扱いはされない(ただしおそらくウィリアム王子はなんらかの爵位を授与されるだろうから貴族の子としては扱われるだろう)。
チャールズ皇太子の次男のヘンリー王子に子が生まれても、同様にその場合は「ウェールズ公の次男の子」になるので、王族にはならない。
ただし、チャールズが王位を継げば、いずれも「君主の息子の子」になるので、おそらくチャールズ皇太子とアン王女のケースと同様、何らかの特別勅許状が出される可能性はおおいにある。



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