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20080512

大統領制と議院内閣制

アメリカは世界の通例から見ると、政治体制においてはわりあい特殊な国で、決して標準的な国ではない。
先進七ヶ国、これに「西欧型社会、民主主義、先進国」というくくりを加え(ベネルクスや北欧、オーストラリアとニュージーランドを加えるという意味)、旧西側資本主義先進諸国を見るに、そのほとんどは議院内閣制を採用しており、実はこのカテゴリーの中では大統領制を採用している国はアメリカとフランスしかない。
フランスの場合は元々は議院内閣制の国であって、第五共和制発足に際して大統領に権限を集中したことから大統領は議会に対しても解散権を持つ。重要な案件について国民投票にかける権利、つまり変種の法案提出権も持つ。
このことから正確にはフランスの政治体制は大統領制ではなく半大統領制ともいう。
半大統領制というとなにやら不十分な権力しか持たない大統領を想起させるが実態は逆で、立法府に対しても権限を持ち、立法権の一部も持っているという意味である。
アメリカの大統領制は、完全に三権分立が徹底した政治体制であり、実は政治体制で見る限り、アメリカ大統領はけっして強大な存在ではない。
日本のような議院内閣制の場合、首相は行政府の長であると同時に、議会においても与党を率いる立場であり、議員でもあり、行政府と立法府双方に権限を有する。
議院内閣制の首相の方がむしろ在任期間が長い傾向が一般にあり、政治制度としては議院内閣制の方が強力なリーダーシップ、政府の権限の増大を生じさせやすいのである。

議院内閣制の中心的な機能は、議会によって首相が指名されるということである。
多くの場合は議会の過半数を得た政党(もしくは連立政党)が首相を選ぶ。つまり首相は、議会の代表的な指導者でもあり、原理的には議会と政府の分裂は生じないか、生じる可能性が著しく低い。
政治の安定度合いでいえば議院内閣制の方がはるかに適しているのだ。
大統領制は発展途上国で多く見られる政治制度だが、大統領は議会によって選ばれるのではなく国民の投票によって選ばれるので、議会の多数党と与党が別、ということが生じやすい。
フィリピンや韓国など、フランスやアメリカを含めて、行政府と立法府の対立がしばしば生じる国のほとんどが大統領制の国であるというのは決して理由がないことではない。

三権分立は権力が権力を互いに抑制しあう仕組だが、それが徹底しすぎれば、統一的な統治が難しくなる。大統領制は抑止を重視するばかりに、権力の統一性を毀損した、ある種の欠陥的な制度だといえる。
国民的な政治的コモンセンスが充実していない発展途上国にあっては、大統領制は政治の不安定化を増大させるという意味で決して適当な政治体制ではないのだが、アメリカでは比較的うまく機能しているように見える。
フランスの場合は、大統領制の内部に構築された議院内閣制が安定を担保しているともいえるのだが、アメリカは非常に徹底した三権分立を敷いていて、容易に政治が不安定になりそうなのだが、必ずしもそうなっていない。
大統領制を採っているにも関わらず、全体として統一しているというのもアメリカが特殊なところである。



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