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20081120

韓国経済、危機の軌跡

1997年のアジア通貨危機では、韓国も非常に大きな痛手を被った。
その後、比較的順調に復興してきたかのように見えた韓国経済だったが、IMFから指摘を受けた韓国経済の根本的な弱点克服にはいたらなかった。
現在、韓国が直面している経済危機においても短期的な処方箋はないが、長期的な処方箋としては、基本的には変わらない。
第一に、内需主導型の経済に移行すること。
第二に、財閥集中型経済を改善し、中小企業中心の経済に移行すること。
第三に、サービス収支の移転を抑制し、国内で移転が完結するよう促すこと。
IMF危機後の韓国の政策は、これら基本政策に反する政策も多く、そのため、基本政策にのっとった方向であっても、ただ単に体力を消耗する結果となった。
なぜそのようなことになったのか、遠因を探れば、「日本に追いつき、追い抜く」という過分な国家目標にある。歴史的な蓄積においても規模においても、まったく比較対象とならないはずの日本と比較したため、非常に大きな無理が生じている。
例えば、世界的に知られる大企業、サムソンやLG電子、現代自動車などは、税率において優遇を受けており、資本と人材の集中を招き、国内市場の寡占化が生じている。国内で蓄えた蓄積でもって、国内価格よりも安価な価格で国際市場において販売を展開し、輸出ドライブを猛稼動させているのだが、これが内需の振興、中小企業の育成という長期的な韓国が取り組むべき基本政策と矛盾しているのは明らかだ。
サムソンやLG電子は半導体部門や家電部門で日本企業にとって無視しがたい競争相手になっているが、その競争力が相当にドーピングされた結果であるのも確かなことだ。
中小企業育成の失敗は、韓国にとって構造的な問題をもたらしている。
ひとつはもちろん、内需振興の失敗という点において。
もうひとつは、部品などの中間財の供給能力の貧弱さという点において。
そのため、輸出ドライブを猛稼動させながら、原材料のみならず、中間財をも他国、特に日本からの輸入に頼らずをえず、貿易収支の赤字化を招いている。
韓国政府も内需拡大を進めるためにまったく無策だったわけではなく、例えばクレジットカード使用の奨励はその政策のひとつだが、このため家計も赤字化することにつながっている。
一方で非常に高利な、伝統的な金融であるチョンセなどの高利率を規制しなかったために、資金が投資ではなく投機へ回る傾向を生み、製造業の循環を断ち切った。
また、韓国個別の問題としては、非常に過激な行動をとりがちな硬直した労使関係の問題もあるが、こうした事情をひとつひとつ見ていけば、韓国経済の問題はまさしくファンダメンタルズの問題であることが分かる。
国際的な投機筋の策謀が確かに直接の危機をもたらしているのだが、その危機に脆弱な構造自体が問題なのだと言える。


私は韓国の状況を見ていて、老人を大事にする国は滅びる、との感想を抱いた。韓国が老人を大事にしているというのではなく、明らかに勤労世帯の利益を軽視している点を見てそう思うのだ。
経済において確かなコアとは、物財であり、物財を提供する製造業である。
この点、私は徹底した保守派であり、国民経済のコアに位置するのは製造業であり、製造業重視派である。ごく小規模な都市国家ならばともかく、多数の国民を養い、確実な国民経済を築くためには製造業こそがコアに据えられるべきである。
この製造業の全体の利益と、それ以外の部門の利益は相反することがある。
例えば、不労所得層にとっては金利は高いほうがいいが、実体経済の中核に位置する製造業は、低金利の方がいいわけである。
韓国の問題はここ20年来、翻弄され続けてきたあるべき国民国家のヴィジョンの揺れの問題とリンクしている。
これはグローバリズムの破綻の一例なのだ。


当面の危機を韓国は乗り切ることが出来るだろうか。
非常に困難だといわざるを得ない。
非常に巨額な外債依存体質を改めない限り、危機の主因を取り除くことはできないし、危機が破綻にいたるまでは、主因を取り除くことはかなわないだろう。
既に隣国の崩壊は秒読み段階に迫っている。これを救済することは出来ないのだから、崩壊に際して、日本は対症療法を整えておく必要がある。



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